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左心低形成症候群(HLHS)|病気の特徴と4回の手術を含めた治療について

子供の心臓病, 左心低形成症候群

 

左心低形成症候群さしんていけいせいしょうこうぐん

 

生まれつきの心臓病の名前です。

耳にしたことはありますか?

 

私が初めてインターネットで検索した時に出てきた言葉は、「最重度」「手術成績は良好ではない」「予後不良」など。

本当によくないものばかりでした。

亡くなった子のブログばかりが目立ち、苦しくてたまりませんでした。

 

  • 生存率は?
  • 手術の成功率は?
  • 生きている子はどのくらいいるの?
  • 成人することはできるの?

 

それを知りたくて、ここにたどり着いた方もいらっしゃるでしょうか。

疾患についての詳細を知りたい方は、このままお進みください。三女が受けた治療の流れに沿って、具体的に記載します。

 

闘病記は以下のリンクからお進みください。治療の経過に沿ったまとめから、育児ブログへと移動します。

関連記事

>>>左心低形成症候群の治療まとめ|4回の手術と予後の生活について

 


[PR]いつもありがとうございます(´▽`)

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先天性心疾患「左心低形成症候群」について

おなかの赤ちゃんは

何らかの重い心疾患を必ず持って産まれてきます。

 

医師からの宣告に、私の頭の中は真っ白でした。

目にうつる世界からは、一気に彩りが失われたような気がしました。

 

どんなに歯を食いしばっても嗚咽は止まりません。

診察を終えて家族の顔を見た私は、子供のように声を上げて泣きました。何度も何度も謝りながら泣きました。

 

突然日常から切り離されてしまったような恐怖、絶望、悲しみ、そして強い強い罪悪感で心がいっぱいになりました。

 

先天性心疾患を発症する確率

先天性心疾患は、100分の1の確率で発症すると言われています。100人に1人ですから、決して遠い世界の話でも、もちろん他人事でもありません。

先天性心疾患に関しては、こちらの本がとてもわかりやすいです。

 

 

左心低形成症候群(HLHS:Hypoplastic Left Heart Syndrome)は、その中でさらに100分の1の確率です。つまり1万分の1になります。

難病情報センターのホームページによると、1.2~1.6%との記載がありました。

 

左心低形成症候群は指定難病

左心低形成症候群は、複雑心奇形とも呼ばれます。

疾患名は同じであっても、細部や症状はそれぞれでかなり違います。この疾患と判断される代表的な所見と、それ以外の部分に分かれます。

 

2015年7月からは、厚生労働省の指定難病です。

一生根治することはありません。

  • 左心室の低形成
  • 僧帽弁の狭窄、閉鎖
  • 大動脈弁の狭窄、閉鎖
  • 上行大動脈の低形成
  • 卵円孔(心房中隔欠損の場合もある)の開存
  • 冠動脈への逆行

 

心臓は4つ(右心房・右心室・左心房・左心室)に分かれていて、左側が体循環、右側が肺循環を担っています。

 

血液が心臓を出て全身に至り、毛細血管を経て再び心臓に戻ってくる循環を体循環といいます。

一方、心臓を出て肺を通り心臓に戻る循環を肺循環といいます。

 

体循環と肺循環|解剖・病態編(テキスト解説)|循環器疾患講座|Adalat.jp

 

左心低形成症候群は、名前の通り左心室の低形成があります。全身に血液を送るためのポンプ部分が低形成です。

僧帽弁の狭窄や閉鎖、大動脈弁の狭窄や閉鎖、上行大動脈と大動脈弓の低形成があります。

  • 僧帽弁(左心房と左心室との間の弁)
  • 大動脈弁(左心室から繋がる上行大動脈への弁)

 

そして卵円孔や心房中隔欠損による、心房間交通があることが大半です。卵円孔は胎児期には誰にでもあるもので、生後まもなく閉じてしまいます。

  • 心房中隔欠損:俗にいう「心臓に穴が開いている」という状態
  • 心房間交通:左心房と右心房の間に穴が開いている

 

 

左心低形成症候群が起こる原因は、おなかの中で心臓が作られる時期に、左右にバランスよく血流が流れなくて、偏りができてしまったことで起こるんじゃないかと。

遺伝的な要素がある場合はもちろんありますけど、モモちゃん(三女)の場合その可能性はありません。大丈夫です!

 

 

 

左心室や弁の形成には個人差があり、三女の弁はどちらも閉鎖しています。

僧帽弁の閉鎖→左心室への流入がない→上行大動脈に血液が流れていかない→低形成、となるようです。

 

最重度の心疾患である理由

肺できれいになった血液は左心房に戻ってきて、左心室へと送られて、大動脈を通って全身に流れていくのが通常です。

>>>心臓のきほん1.心臓はどこにあるの?どんなかたちをしているの?【東京女子医科大学 心臓血管外科】

 

左心室がなければ、肺から戻ってきた血液の行き場はありません。体循環がなければ戻ってくる血液もなくなりますから、肺循環もなくなります。

血液が巡らない=死、です。

 

ただし前述したように、心房間交通があります。

左心房から右心房へと血液が流れていき、きれいな血液(動脈血)と汚れた血液(静脈血)が混ざったまま、右心室から肺に送られます。

 

心房間交通が狭い場合には、バルーンなどで広げる処置も必要とのことですが、三女は必要ありませんでした。

 

胎児期に生存できる理由

産まれたばかりの赤ちゃんには、動脈管というものがあります。大動脈弓と肺動脈を繋ぐ血管です。

  • 大動脈弓:上行大動脈と下行大動脈の間にある弓状の部分
  • 肺動脈:右心室から肺へと流れていく血管

 

右心房から肺動脈を流れて肺に送られる途中で、動脈管を通って大動脈(大動脈弓・下行大動脈)へと分岐していくため、体循環が守られます。

そして通常とは逆行する形で、上行大動脈へと血液が流れて冠動脈へと送られます。

 

大抵の場合は生後間もなく閉じてしまうものですが、これをプロスタグランジンという点滴で開存させておくことで、生存が可能になります。

ただし効果は平均3ヶ月です。

 

ほかにも動脈管を開存させるだけなら、ステント留置という方法もあります。

 

動脈管の開存だけでは生存できない理由

左心低形成症候群は、肺血流増加型の心疾患です。

生後4~5日経つと肺血管抵抗が下がり、肺に血液が流れやすくなります。肺血流が増加してくると、逆に全身への血流量は乏しくなってしまうのです。

  • 壊死(えし)性腸炎
  • 尿量減少
  • 浮腫
  • 肺うっ血
  • 心不全

 

この時期には、血中酸素濃度(SpO2)も一気に80前後まで下がります。チアノーゼ性心疾患でもあります。

 

逆行する形で冠動脈へと送られる血液は、動脈血と静脈血の混ざったものです。

本来であれば左心房から上行大動脈へ送られた直後に、大動脈弁の直上にある冠動脈へと流れていかなければいけません。

 

心臓にも血液は必要で、冠動脈は心筋に酸素や栄養を送ります。それがままならないということは、とにかく危険です。

 

この疾患は、循環(血行)動態の管理が極めて難しいものです。

妊娠中にわからなかった場合、処置が遅れて亡くなるケースや、手術まで持たないことも少なくないと聞きました。手術まで持ったとしても予後があまりよくなく、長期生存はまだまだ難しいとされています。

 

現に10~15年前には、ほとんどが助かりませんでした。

治療できる施設が限られているのです。

 

三女の治療経過について

両側肺動脈絞扼術

緊急帝王切開で出産した直後から、保育器に入り、NICUでの治療を開始しています。

  • 生後0日目 プロスタグランジンの点滴を開始
  • 生後4日目 総合病院から大学病院へ転院
  • 生後5日目 肺血流増加のため「低酸素(窒素)治療」を開始
  • 生後8日目 壊死性腸炎の疑いのため絶食管理
  • 生後17日目 気管挿管
  • 生後19日目 敗血症
  • 生後37日目 内科的治療限界のため急変
  • 生後39日目 緊急手術にて両側肺動脈絞扼術

 

両側肺動脈絞扼術(肺動脈バンディング)とは、肺血流増加型の単心室・単心室症に対する姑息術になります。

単心室とは、左右の心房の片方がない、もしくは十分な大きさがない。つまり機能する心室が1つしかない状態です。三女にも、機能していない小さな左心室があります。

 

肺動脈に10mm程度のバンドをかけて、0.1mm単位で調節します。肺血流をコントロールすることで体循環とのバランスを取るものです。

 

この手術を受けずに、次のノーウッド(ノルウッド)手術を受ける場合もあるようですが、両側肺動脈絞扼術を受けた方が次の成功率が上がるのだそうです。

心臓の元気度を測るBNPの値(基準値は18.4pg/ml)が、この当時の三女は5000~6000pg/mlだったと聞きました。

 

ノーウッド・グレン手術

プロスタグランジンの効果がいつまで持つのか。医師も慎重に経過を見ながら、体重増加のために試行錯誤してくれました。

 

最終的には3ヶ月を大きく越えて、生後5ヶ月でノーウッド手術と同時に、両方向性グレン手術という、その次の手術も同時に行えることになりました。

プロスタグランジンの効果だったのか、動脈管開存症だったのかはわかりません。

 

ノーウッド手術で、右心側で体循環を担える形に作り替えます。肺動脈と低形成の上向大動脈を繋ぎ合わせ、新たに上行大動脈を形成します。

 

三女は左上大静脈遺残ひだりじょうだいじょうみゃくいざんというものがあり、これも胎児期の血管の名残です。三女は(右)上大静脈もありますが、どちらも通常より細いのだそうです。

それをどちらも肺動脈と繋げています。

 

疾患の名前は同じでも、具体的な症状は人それぞれ違います。看護師さんはこう言っていました。

 

 

 

最初の分化で間違っちゃったんだから、他にたくさん間違いがあっても仕方がない

 

 

 

ノーウッド手術の成功率 

ノーウッド手術は、術後1ヶ月間の生存率が60~70%程度と、心臓手術の中では抜きん出て成功率の低く難しいものです。そこに両方向性グレン手術を合わせると、術後は安定しやすい代わりに、難易度が上がるとのことでした。

 

 

両側肺動脈絞扼術の際に、執刀医から聞いた話です。

 

こちらで行われたノーウッド手術は18件(2015年9月当時)

そのうち亡くなられた子は1人、肺の低形成があったそうです。それ以外の17人は元気になって、大きくなっているとのことでした。

 

執刀医や医療機関によっての差は、もちろんあるでしょう。

それでも「希望を持っていいんだ」と思えるほどに、医療は進んできているのだと感じられました。

 

最終的にはフォンタン手術にて、フォンタン循環をめざします。

右心室を体循環に使用するため、本来右心室で行われる肺循環は「心臓を通さずに直接肺へと送る」ことになります。

 

肺動脈に上大静脈を繋げ、上半身のチアノーゼを解消するのが両方向性グレン手術。下大静脈を繋げ、下半身のチアノーゼを解消するのがフォンタン手術です。

これらの手術は開心術(人工心肺を使用する)で、合併症などのリスクもとにかく高いものです。ノーウッド・グレン手術は、予定時間が10時間でした。

 

上述した手術にはいくつかの術式があります。

詳細に関してここでは省略しますが、手術も含めて治療を受ける際にはICでしっかりと確認してください。

  • IC(インフォームド・コンセント):治療内容の説明・合意

 

不安を残したまま治療を進めていくと、不測の事態が起こった場合につらい思いをすることも出てきます。

わからないことは、できるだけ早く確認して、不安を取り除く必要があります。

 

三女がノーウッド手術を単独で受けられなかった理由

左心低形成症候群での大動脈の太さは3mmを基準にしていて、2mm未満だと成功率はかなり低いと聞いていました。

三女は11月の造影CT検査時点で、内径2mm。

 

 

20例ほど手術の実績がある大学病院でも、とても難しい手術になると。ICでは「心して行わなれればならない」と、ハッキリ告げられました。

 

そしてこの血管の細さだと、ノーウッド手術時に人工血管を使って肺血流を作った場合(BTシャント術)、冠動脈への血流が乏しくなり、心筋梗塞を起こす可能性がありました。

上行大動脈が低形成なら、冠動脈も低形成です。

 

ノーウッド手術の術後1ヶ月生存率が低いのは、このバランスを取るのが難しいところにあります。ありえないほどに状態が安定していた三女、この当時のBNPは50~100pg/ml程度でした。

 

そこで手術を1ヶ月延期して、2mmを超えるまで体重増加(3500g→最低4000g)をめざすことになりました。

同時に両方向性グレン手術をすることで、人工血管は使わずに済みます。上大静脈を肺動脈に直接繋ぐことで、冠動脈への血流を維持できます。

 

この時点で、肺動脈の太さは14mm、心臓の大きさはいちご大程度。0.1mmが結果を左右する、まったく想像もできない世界です。

 

低出生体重児というハイリスク

通常だと、生後数日で両側肺動脈絞扼術、1ヶ月以内にノーウッド手術が行われます。

 

しかし三女は1688gの低出生体重児。

両側肺動脈絞扼術までの目標体重は2200gでした。この500~600gでさえ到達はかなり難しいと見られていて、転院後のICでは助かる確率が50%と言われています。

 

 

3時間毎に20cc程度の母乳を、シリンジポンプを使って1時間かけて注入していました。そうでなければ、消化の際に負担が大きかったのです。

体重増加のために脂肪の点滴もしていました。

 

後に「NICUの看護師から、かなり大変だったと聞いています」と小児科で言われていますし、小児循環器の医師達も「NICUで先生達が頑張ってくれたから」と何度も言っていました。

私たちでは想像できないほどの、奇跡の連続だったのでしょう。

小児科では、ミルクの濃度を上げたものや、「MCTパウダー」と呼ばれる、消化吸収がよくエネルギーになるものを添加して飲ませていました。

MCTパウダーを添加してからの体重増加には驚かされました。

 

術後の合併症「乳び胸」

術後8日目に、乳び胸がわかりました。

胸管が傷ついたことにより乳び(乳白色のリンパ液)が漏れてしまい、胸腔内に溜まる状態です。治療は状態や施設によって多少変わるようです。

 

三女の場合は、以下のように進みました。

  • 術後8日目 乳び胸の診断
  • 術後8日目~93日目 MCTミルク使用
  • 術後12日目~25日目 サンドスタチン(ホルモン剤)点滴
  • 術後25日目 胸管結紮術
  • 術後25日目~31日目 ICUにて絶食管理

 

退院後もMCTミルクは2ヶ月弱続きました。

 

治療用ミルクなのですが、薬扱いにはならないため医療費の還付対象にはなりません。全額自己負担です。ドラッグストアなどでは市販されておらず、通販で1缶3700円前後、全部で15缶買いました。

 

とても消化がよく2時間置きに120cc飲んでいたのですが、1缶が3日半でなくなります。 

 

 

ノーウッド・グレン手術後のこと

三女は2016年2月27日(生後211日目)で退院。

在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)をしていましたが、退院後3ヶ月で使用を中止できる状態になりました。

 

術前評価のための心臓カテーテル検査

2017年5月には、術前評価のための心臓カテーテル検査を受けました。

フォンタン循環となってからのこと、保育園・幼稚園、小学校での生活、運動制限など、小児循環器の主治医の説明も記載しています。

関連記事

>>>フォンタン手術に向けた術前評価|心臓カテーテル検査

 

フォンタン手術(TCPC)

2017年8月には、フォンタン手術(TCPC)を終えました。

フォンタン術後症候群、フォンタン循環での寿命について、循環器外科の主治医に質問した内容を記載しています。

関連記事

>>>フォンタン手術に関する治療まとめ | 側副血管に対するカテーテルでのコイル塞栓術・フォンタン手術

 

現在は月1回の定期健診と、毎日の服薬でとても元気に過ごしています。 

ここまで到達できるのはおよそ50%です。

 

最後にまとめ

私たちは「三女を見送る」ことになる可能性が高いです。

長女も次女も、受け入れることはできていないかもしれませんが、理解はしてくれています。そこにはきょうだい児としての葛藤もあります。

関連記事

>>>「障害児の親になる」という葛藤ときょうだい児の気持ち・前編

>>>「障害児の親になる」という葛藤ときょうだい児の気持ち・後編

 

心臓病であること、障害児であることを忘れる日はありません。

三女が1日も長く元気で、そして1日も長く生きてくれますように、そう毎日毎日祈りながら生活しています。

 

私たちは医療の進歩を信じています。

関連記事

>>>臨床研究への参加|未来への希望を託して

 

三女と出会えたこと、家族になれたことは、人生最高の喜びです。彩りが失われたと感じた世界は、以前より輝いていて充実しています。

不幸ではないと言い切れます。

 

世の中にはたくさんの疾患があって、目に見えるもの・見えないものもあります。目に見えない障害(=内部障害)を持っている方が、無理解に苦しんでいる現状もあります。

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>>>ヘルプカード・ヘルプマーク|認知度の向上と普及拡大をめざして

>>>難病であるALSを応援!私たちは微力だけれど必ず大きな力になる|せりか基金

 

「普通の子(人)と変わらないよね」と言われることが、救いでありながら時に傷つく言葉にもなります。

当事者はもちろん、家族には大きな葛藤があります。

 

身近にないことを知るのは難しく、簡単に理解もできないでしょう。

「ある」ということだけでも知ってください。

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北海道の三姉妹お母ちゃん。借金背負った夫と、小学生の姉ちゃんズ、難病で生まれた三女。人生いろいろあるけれど、トライアンドエラーで笑って生きていくんだ。ネジ巻き直して「よーい、どん!」

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